※当ホームページでは、毎週火曜日にバックナンバーを追加掲載しています。
平らな国デンマーク/子育ての現場から / 高田ケラー有子
高田ケラー有子(Yuko Takada Keller) 造形作家(デンマーク北シェーランド在住)
京都市立芸術大学大学院修了。日本在住時よりヨーロッパ、アメリカなどで作品を発表。1997年よりデンマーク在住。近年はデンマークを中心にヨーロッパ、日本で作家活動。キューレータとしても、日本のアーティストをデンマークに紹介している。
コミッションワークとして、岡山県早島町町民総合会館「ゆるびの舎」、兵庫県 看護協会に作品を手がけている。
著書に『
平らな国デンマーク〜「幸福度」世界一の社会から〜
』(NHK出版生活人新書)
Webサイト:
http://www.yukotakada.com/
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第90回 「IT化の進む教育現場」
配信日:2010-06-27
今週末(6月26日)から夏休みに入るデンマーク。夏休み前、最後の週は、例年通りアクティビティーウィークで授業は一切なく、5年生の息子のクラスは、月曜から水曜までの3日間毎日遠足。とは言っても、近郊の森や、サイクリングツアーなど、お金をかけない遠足で、5年生を楽しく締めくくろうとしています。
前回のJMMでも天候のことに少し触れましたが、今年の春も、冬に続いて寒い春となったようで、5月の平均気温は9.4° C。平年を1.4° C下回り、ここ14年間のうちで最も寒かったようです。日照時間も平年より短く、そのため昆虫たちの活動も活発に行われず、我が家のサクランボは、花だけはしっかり咲いたものの、実がほとんどついておらず、今年の収穫は全く期待できない状況です。
6月に入っても、気温はさほど上がらず、冷夏になること間違い無しと言われており、私たちもすぐそこまで来ている夏休みを実感できずにいます。
息子が通う公立学校の5年生の授業を少し振り返ってみると、年々多少は課題も増えて来ているものの、まだまだのんびりしたもので、算数などは日本と比べるととんでもなくレベルが低いようにも思います。
ただ、大きく変わって来たのは、デンマーク語と英語の授業で、それぞれコンピュータを使う時間が大幅に増え、また調べたことや、課題に添ったテーマで自分なりのファイルを作って発表する授業が増えて来ました。
いわゆるプレゼンのようなことをする訳ですが、文章を書くのもコンピュータで、インターネットで調べものをして、画像を取り込んでファイルにしていきます。歴史の授業でも、自分でテーマを絞ってその歴史を調べ、みんなの前で発表する、という授業など、とにかくコンピュータを使って当たり前。ノートを使うよりキーボードを使う時間が増えつつあり、その善し悪しを考えさせられています。
まず、自分の手で字を書く、というデンマーク語の基本が、おろそかにはならないか、本を読んで調べるのではなく、ネットサーフィンで調べて、コピー&ペーストで文字を移し込むことで、本当に身についていくのだろうか、という問題を常に感じています。またネットで調べた情報が100%正しいとは限らず、大人の判断力もまたネットに頼っていることもあり、そこにも大きな問題を感じています。
この年齢からプレゼンの基礎を学び、コンピュータも使いこなして行くことで、実践力にはなっていくのでしょうが、少し多すぎるようにも感じています。黒板がなくなり、教室でもスマートボードでインターネットを使いながら授業が進んでいく。もともと教科書に頼りすぎず、経験することで学ぶことが基本にはなっているものの、インターネットの疑似体験では、実体験に勝る訳もなく、このあたりで、少し検証しながらやっていただきたいと思っている所です。
親の方もけっこう大変です。英語の授業で"My Story"と言うテーマで発表をする機会があったのですが、赤ちゃんの頃からの写真を生徒用のイントラネットを通じてアップロードしなければならず、その手伝いをしなければなりません。
息子は12歳ですので、12年前の写真からアップするのですが、当時はまだデジカメを使い始めて間もなく、ほとんどがプリント写真しかなく、スキャンして画像を取り込んで、それをアップする作業となり、どこの家庭でも親の出番があるものとして、そうした課題が与えられます。
おまけに、学校のイントラネットのシステムそのものが、まだ安定性がなく、課題をアップしようとしても、できなかったり、学校でもログインするだけで終わってしまった、などというようなこともまだまだあり、それでも、頑なにIT授業を進めているところにも少々疑問を感じています。
もちろん、そればかりではなく、手工芸、木工、図画工作の時間はそれぞれ別々にあって、手を動かす授業がないわけではなく、むしろものづくりの観点ではいい部分もたくさんあります。
ただ、勉強の部分についてはIT化が進んでいると言わざるを得ず、動き始めた所なので、検証しながらそのバランスを考えて欲しいと思っています。
連絡事項もすべて親のイントラネットでお知らせが回って来ますし、こちらからの報告もすべてイントラネットです。でも、それだけでは伝え切れない部分もあるので、どこの家庭でも時々電話で担任と話したりしています。特に難しい年齢に差し掛かることもあり、その意味ではイントラネット中心ではあるものの、アナログ的な関わりも、もちろん大切にしています。
高校では、1ヶ月ほど前から、試験中にインターネットで調べものをしていい、という試みも始まり、これは世界初の試みだ、などとニュースで報道されていましたが、そんなに自慢することなのかどうなのか、よくわからない部分があります。
ただ、そういう方向に進みつつあるのだ、と言うことは読み取れ、その中で何を残して行くべきか、しっかり議論して欲しい所です。
IT化ではありませんが、宗教の時間も変わりつつあるようです。まだ確定している訳ではありませんが、宗教の時間に「スターウォーズ」を取り込もう、というアイデアが、宗教学の専門家の間で議論されています。
週1回の学校での宗教の時間を、今の時代により見合ったものにしていくことと、子どもたちの関心を得るために、スターウォーズは格好の素材、だと捉えている宗教学者がいて、真剣に議論しているようです。
つまり、スターウォーズは、様々な人間関係と宗教の関わりを反映している、というわけです。その意見を肯定はしなくても、否定もしない学者もいて、むしろこうした映画が宗教学への興味の引き金になる部分があり、実際、映画を使いながら宗教考察をすることもあると。
例えば、Matrixでイエスとしての役割が演じられているように、取り入れられる要素は多くあり、子どもたちの興味を引く上でも、いい考えかもしれないと。
ただ、週1回の宗教の時間で、どこまでスターウォーズの世界を語ることができるのか、挑戦でもあるとしながら、英語やデンマーク語の授業とも連携を計れば可能性は大いにある、ということで、この議論、結論はまだわかりませんが、実現しても、おそらくほとんどの親も子どもも驚かないことでしょう。
デンマークの学校で、そうした連携授業が日常的に行われていることも、いい部分でもあると思っています。いずれにしても楽しいことや興味のあることから学んで行くことは大切なことですが、IT化に関しては、インターネットを使ったり、コンピュータを使うことが楽だから、という発想にならないように、親としては注意しておきたい所です。
ところで、今夜はワールドカップの日本対デンマーク戦があります。この寄稿文が配信される頃には、結果が出ていることと思いますが、我が家では家の中でも応援合戦の混戦が予想されます。正直、どちらも応援したい。息子と私は、きっと両方応援することでしょう。どちらのチームにも、悔いのない、いい闘いをして欲しい、と願っています。
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