海外レポート/エッセイ
    ※当ホームページでは、毎週火曜日にバックナンバーを追加掲載しています。
高田ケラー有子(Yuko Takada Keller)   造形作家(デンマーク北シェーランド在住)
京都市立芸術大学大学院修了。日本在住時よりヨーロッパ、アメリカなどで作品を発表。1997年よりデンマーク在住。近年はデンマークを中心にヨーロッパ、日本で作家活動。キューレータとしても、日本のアーティストをデンマークに紹介している。
コミッションワークとして、岡山県早島町町民総合会館「ゆるびの舎」、兵庫県 看護協会に作品を手がけている。
著書に『平らな国デンマーク〜「幸福度」世界一の社会から〜』(NHK出版生活人新書)
Webサイト:http://www.yukotakada.com/
第60回 「環境問題への関心」
配信日:2008-01-16
 例年よりはるかに温かい冬を少々物足りなく感じているこのごろです。日中の気温が7度にまで上がることもあり、例年より5度前後高い感じで、デンマークの1月とは思えない陽気ですが、庭にはすでに草花も芽吹き始めており、春の訪れさえも感じています。地球温暖化を肌身でまとも感じるようになったのは、数年前からではありますが(昨冬に続きこの冬も桜が咲きました)、年末に車を買い替えるにあたって、車に課せられている環境税など、いろいろと考えたり意識する機会も多くなってきています。日本でも、テレビなどで環境問題に関する番組などが特集で組まれていたりするようですが、デンマークでの意識や取り組みなども改めて認識しているところです。

 前回、デンマークでは車にかかる税金が高い、という話題を書いたところ、一体どう言う仕組みになっているのか、というご質問を何人かの読者からいただきました。ほんとにどうしてこんなに高いのか、ため息の税金システムをご紹介してみます。

 新車の場合、デンマーク製の車はないので、全て外国からの輸入車を買うことになる訳ですが、この登録税(輸入税とも言える)が車の価格の内76400クローネ(約160万円)に対して105%、残りの価格に対して180%かかってきます(2008年の数字)。そしてさらに、その合計価格に対して25%の消費税が課されます。わかりやすく日本円で計算してみると、例えば新車価格が200万円の車だと、内160万円に対して105%の税金で328万円、残りの40万円に対して180%の税金がかかり112万円となり、合計440万円。そこに消費税25%がかかって550万円となるわけです。元の価格が大きくなればなるほど、180%の課税率が多くなって、300万円の車は900万円にまでなってしまい、ちょっといい車が超高級車になってしまうわけです。

 中古車も、この税率がかかって入って来た車の中古な訳ですから、もともと高いものがそうそう安くなる訳もなく、庶民には高嶺の花となるのでした。中古を輸入する場合にも、年数に応じた細かな計算があり、いずれにしても税金が山盛りかかってくる、というわけです。

 私たちが、結局ローンを組んで購入したのは、2004年式オペル・アストラのステーションワゴン(1600CC)ですが、消費税込みで154000クローネ。諸経費と後ろにトレーラを接続できるヒッチをつけたので(田舎では必須)、結局トータルで164000クローネ(約344万円)の大きな買い物になってしまいました。
 車を選ぶ時、ガソリン価格の高騰もあり(現在1リットル10クローネ前後=約210円)、燃費にはかなり注意していましたが、この燃費によって使用している車にかかる税金が変わってきます。1997年以前の車に対しては重量税が適用されていますが、97年以降の車に対してはグリーンTAXという名称の環境税として排気量でも重量でもなく、車の燃費によって税金が算出される仕組みです。

 2004年式オペル・アストラの場合、燃費が14.5kmで計算されており、ガソリン車の燃費14.3kmから15.4kmの間に相当し、半年に1260クローネ(約26460円)の税金を支払うことになりました。税金が一番安いのは燃費20km以上の車で半年で260クローネ(約5460円)、一番高いのは燃費が4.5km以下の車で半年で9230クローネ(約193830円)というように、燃費によって24の段階に細かく課税率が違う仕組みになっています。ディーゼル車にはまた別の課税率が設定されており、より少ないエネルギー消費を奨励する形になっています。

 この環境税が高いのか安いのかは別にして、人々の意識として、環境税をできるだけ払わなくていい環境を自ら作ることが、車を使う意識の中に入って来ることは確かです。これからやってくるさまざまな現象を避けることはできないにしても、少しでもその時期を延ばすことや、また代替となるエネルギーやCO2を排出しない工夫を、より多くの人間がほんの少しづつでもしていければ、限られた人たちが徹底的なエコライフをおくることよりも役立つのではないだろうか、と、ごく一般レベルでできることを考えた時に思うのでした。

 例えば、週に1日だけ車を使わず歩いて駅まで行ってみるとか、何キロ以内なら自転車にするとか、車を使うのをほんの少しだけ控えるだけでも、世界中の人がやってみれば、なんらかの効果につながるのでは、と思うのです。世界中の人にやってもらうことが難しい訳ですが、より多くの人ができることとして、個人レベルでまず簡単にできることと言えば、そういうことかな、と思うのです。

 車を一切使わない、という考え方は、現実に車社会に暮らしていると、なかなかできることでもなく、できる人はごくわずか、ということになってくるでしょう。そうなれば、いくら使わない人が増えたとしても地球規模で見れば、たかが知れているのでは、としか思えません。ならば、意識のある人を増やすことも大切かもしれないけれど、なにもしていない人にも少しだけなにかしてもらうことを考える方が、結局はその人たちにとってもたとえばそれが健康に繋がったり、節約になったりすることを思えば、CO2の排出量を削減する可能性もなくはないのでは、と思いたいのです。
 その意識をなんとなく植え付けているのが、この環境税だな、というふうに私は車の購入という行為を通じて感じたのでした。

 車の燃費によってかかるグリーンTAXだけでなく、私たちが暮らして行く上で必要不可欠な要素である電気代やその他のエネルギー消費にかかる経費には全て二酸化炭素税がかっています。例えば電気代でいうと、使用料1kWhに対して0.1125クローネ(約2円)の二酸化炭素税がかかっています。平均的な家庭で年間に300クローネから400クローネ(約6000円から8000円程度)の二酸化炭素税を払っているようですが、決して高くはないと思いますが、エネルギーを使えば税金がかかるという意識は確実に芽生えていると思います。もちろん高騰し続けているガソリンにも輸入税のみならず二酸化炭素税も含まれています。

 もともと環境に対する意識は高い国ではありますが、前回の総選挙で発足した新政府の Connie Hedegaard という女性の環境大臣の働きもあり(インドネシアの会議で、アメリカが責任をもってリーダシップをとるべき、など積極的な発言を多くしたことが評価されている)、環境に対する人々の関心はより高まっているように思います。
 アメリカ大統領選挙の候補者選びが佳境に入っていますが、民主的な意見を持つ人が多いデンマークの中でも、共和党の候補者 John McCainに密かな期待を抱いているデンマーク人もいます。これは環境に対する意識の違いがそうさせているようで、私の夫もその一人です。とは言っても、ビル・クリントンのファンが多いデンマーク。ヒラリー・クリントンに注目している人が絶対数としては多いとは思いますが、環境問題を視点に、大統領選挙に興味を持っている人もいることは確かです。

 アル・ゴア氏の映画については、デンマーク人の反応は概ね受動型ですが、科学者の中には事実に基づきながらも、その数値などが極端に大げさなものになっているケースもあるとして、好意的でない見方をしている人も少数派としてはあるようです。そうであるとすれば、単純に報じられることを信じがちな一市民としては、メデイアの果たす役割も考えるところです。恐怖感や絶望感を煽るような情報ではなく、正確なデータをその正確な原因も含めて情報として提供し、これから起こってくることを事実として受け止めながら、マイナスの要素をプラスに変えて行ける考え方の提起をして欲しいものだ、と勝手ながら思ったりします。口で言うのは簡単でありますが。
 とりあえず、こんなことしても大勢に影響はない、と一個人が及ぼす影響などないとは決めつけず、些細なことでも自分にできることをして行きたいと、10歳になった息子といっしょに考えています。学校の送り迎えもそうですが、車でしていたことを少しでも減らせるなら減らして行こうと。自転車はいいなあ、と最近つくづく思っています。ただ根性がなくてなかなか毎日使う、というところまで行きつけません。修行が足りん、というところでしょう。

 息子の学校でも日本の理科に相当する自然科学の時間に、少しづつ環境問題なども含めた気象の話など聞いているようですが、たかが10年しか生きていない彼らには、私たちがより身近に感じて来た変化など身にしみる訳もなく、子供にも理解できるガソリン代の高騰をプラス思考に転換して、自転車の利用度を高めよう、というところです。

 息子が年老いた時、息子の孫も安心して暮らせる地球があるようにと、願っています。そうしたことを考える時、私たちが果たす役割はなにかあるのではないか、できるのでは、と思いたいです。生活をまるっきり変えることなんて、ほとんどの人ができないでしょう。またそれを期待するのは間違っているとも思います。でもたくさんの人がちょっとだけなにかできることをすれば、なにかが変わるかもしれません。

「地球は親から譲り受けたものではなく、子供たちから借りているもの」ということわざがデンマークではよく使われます。アメリカ先住民の古いことわざだそうですが(今のアメリカを思うと皮肉なものです)、子供たちから借りている地球を、汚さず壊さず、大人の責任として守っていこう、という意識が感じられます。

 日本ではTOYOTAがプラグイン・ハイブリッドカーを、2010年までに実用化するようですが、デンマークでは1985年に最初の電気自動車(ハイブリッドではありません)が開発されていたそうです http://www.ellert.info/。なんでも実用車としては世界的にも初ものだったとか。ただ、ハイブリッドカーとは似ても似つかぬ車というより3輪のモーターサイクルで一人乗。価格が27450クローネ(約57万円)、ということもあり、当時ほとんど売れず、また売れた車のうち火を噴いたものがあったらしく、結局リコールで製品を回収し、製造会社は倒産。それでも現在は、その電気自動車の構造をドイツの会社が買い取り、今でも製造販売しているそうです。

 この電気自動車、各自動車メーカーが開発しているハイブリッドカーとは全く違うものですが、1992年にはバルセロナオリンピックでこの電気自動車が競技誘導車として活躍したとか。そもそも自動車メーカーのないデンマークで電気自動車が開発されていたこと自体、驚きでもありますが(酪農の国らしく、トラクターや収穫用の農耕機器の製造会社が開発していた)、愛用している人もあるようです。

 それにしても家庭用の電源でチャージできる車が実用化されるのは、素晴らしいことですが、このプラグイン・ハイブリッドカー、デンマークに輸入されたら一体いかほどの価格になるのかと想像するだけで、気が遠くなりそうです。

 風の国デンマーク。風力発電や太陽エネルギーなど、クリーンなエネルギーに転換できることがあるのであればということで、これから新築される家の中には、ソーラパネルや地熱利用の暖房システムなど導入しているところも増えて来ているようです。築40年以上の我が家でできることは何か、我が家レベルで多少なりとも意識を高めているところです。

 子供の遊び環境にも変化のある昨今。多くの子供たちが電気を使うおもちゃを自在に扱うようになってきました。外遊びの要素がまだまだ多い国ではありますが、それでも電子おもちゃの普及率は、日本とさほど変わりないように思います。電気を使うおもちゃを使わせながらも、外遊びやお絵描きなど、体と右脳を使う時間を、意識的に取るようにしなければ、と最近思っています。

 さしあたり、2月の初めに親子でノルウェーにスキーに行く事にしたので、只今体力作りを親子でしているところです。私はかれこれ15年ぶりのスキー。息子にとっては初めてのスキー。学校から帰って来てから、息子と二人でマウンテンバイクで森の中を走っています。なんだかんだととにかく動機付けをして親子で楽しめることをしていくと、自然と電子おもちゃを使う時間が減っています。これもひとつの、自分たちのためでもあり個人レベルでできること、かもしれません。

 いろいろと考えてはいるものの、とりあえず、電気をマメに消す習慣をつけなくちゃ、という低レベルの我が家ですが、なにもしないよりはマシ! 年頭に当たり、できることを息子と考えるのが、今年の抱負、ということにしておきます。

村上龍RYU'S CUBAN NIGHT