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No.549 Monday Edition 
配信日:2009-09-14
 Q:1028への回答ありがとうございました。ニューヨークタイムスへの原稿ですが、結局掲載されたようです。わたしが書いたものよりいくぶん短くなって、文章の一部が移動したり、「編集」されました。論旨やニュアンスが変わらないように配慮して、編集部内でああだこうだ議論しながら、「編集」したのだそうです。英語を日本語に直訳したものを読んでみると、わたしのオリジナルよりも、ストレートでシンプルな表現が多くなっていました。できるだけ「読み手」に伝わりやすいようにという努力を、締切直前まで徹底的に行うという姿勢が感じられて、好感を持ちました。

 わたしが知る限り、日本の新聞や雑誌などではこういった「編集」は皆無に近いです。しつこいくらいに論旨を整理し、徹底的にわかりやすくしようとするわけですが、わたしは、映画『KYOKO』の脚本を書いていたころにさんざん付き合った、LAのロジャー・コーマン・プロダクションの若手スクリプト・デベロッパーとのやりとりを思い出しました。

 モチーフはいいけどこれでは伝わらない、というのが脚本開発担当の口癖で、そのしつこさに閉口して、何かオブセッションのような不気味さを感じたほどでしたが、脚本は確実によくなっていきました。アメリカのメディア人からは、何かを伝えることの困難さを知り抜いているという印象を受けます。誰かに何かを伝えるためにはこの程度の努力では足りない、このままでは絶対に伝わらない、という思いは、表現を平板にしてしまうリスクもありますが、情報の共有を所与としてものごとを考えることが多い日本人にはよい参考になると思いました。
村上龍RYU'S CUBAN NIGHT