村上龍、金融経済の専門家に聞く
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村上龍からの質問
Q.1257
配信日:2012年04月10日
もし総選挙が実施された場合、消費税増税に反対の人、賛成の人は、それぞれ、どの政党に投票すべきなのでしょうか。
寄稿家: 立原遼 の回答
評論家
「政党の鵺化と中選挙区制度再考」

 民主党の中にも消費税増税に賛成する議員と反対する議員が存在し、自民党の中にも消費税増税に賛成する議員と反対する議員が存在する。しかも政党としての意思決定過程で立場が一つに集約される事も(なぜか)ない。それがマスコミ報道を通じて選挙民にも分かってしまっている。かといって、政権付託者を決める意味合いを持つ衆議院選挙において、少数野党を支持するのも躊躇われる。それが多くの選挙民の感慨ではないか、と推察します。

 とすれば設問のように消費税増税についての自身の判断を最優先して、それでも政権与党を選択する投票を考えるのであれば、政党ではなく自身の選挙区において、民主党、自民党両党の候補者が、個人として消費税増税に与するのか、そうでないのか、それを以って投票の根拠とする、それが現実的な対処法ではないか、と思います。

 勿論、敢えて政党ベースで小数野党に投票し、民主党や自民党をこの争点においては牽制する政治状況を現出させる事、を選ぶ選挙民も存在するでしょう。国家の舵取りは様々な複合的な問題への対処を前提とはするものの、その歴史過程毎にポイントを成す政治的イシューは変わりますので、基本的には民主党、自民党両党を核にしながら、少数野党がその時々に勢力を変え、連立内閣が常態となって、その時々の問題に対処する、そんな政治的構造も日本的な風土には適合しているのかも知れません。
 
 しかし連立政権には、どうしても全ての問題においての(一定の誤差、同床異夢性は含んだにせよ)コンセンサス、特に政治的な思想におけるコンセンサスは存在しにくいので、強い政治を希求すべきタイミングでも、どうしても弱い政治しか実現できない、そんな弱点が指摘できます。

 グローバル化し、全てが一つに溶け込みながらも、一方では国家という括りの有効性も消えず、国家と資本主義が微妙な牽制を行いながら運動する現実の中では、「弱い政治」よりは「強い政治」が求められる、とすれば政権を担う強い与党の出現も期待される処です。

 理想論で言えば、消費税増税に共に反対を表明しても、その前提となる政治思想も現実認識も全く異なる事も容易に想像できる訳で、近しい政治思想、現実認識を共有しながら、消費税増税に賛成と反対と分かれる二つの政治勢力があるとすれば、それは<処方>とタイミングの問題なので、議論を通じて、同じ政治思想(社会哲学)を有する政治勢力が結集していく方が、政党論としては正しいと思うので(それが全ての問題に対する基本的な姿勢なので)、単純な賛否の議論ではなく、その根底に流れるものをそれぞれの政治勢力が冷静に分析・把握・自覚し、政治的結合を図ってもらいたいし、それが逆に選挙民にとっても、自身の投票の軸となるように思うのですが、いかんせん、日本の現実はそこからはずっとずっと遠いように感じます。

 であるならば、日本の現実や政治風土、国民性を鑑みて、理想論に流れた小選挙区制度をこの際、やめてしまい、もぅ一度中選挙区に戻し、同じ選挙区に民主党野田派と民主党小沢派の議員がいて、二人が議席を争う、という状態を作る、派閥政治の功罪の功を伸ばしていく、そんな選択もありえる、そんな気がします。前原派の新人と野田派の中堅が勝ち、小沢派の現職が負けたなら、それが全体としては民主党を支持しながらの選挙民の判断だった、それであれば結果として民主党が長く政権を担いながら(自民党でも構いません)、時々のイシューについては鵺のように柔軟に対処していく事ができる。。。。。

 個人的には、以前何かの設問で回答させて戴いたように、小選挙区を前提に鵺的政党を否定したい立場ではありますが、現実的対処として、所詮、日本の政党は鵺化する(だから選挙公約や政治思想を小沢氏から見れば軽々しく踏みにじり、民主党が消費税増税の旗頭になる)、という認識から考えるなら、逆にそれを生かして、中選挙区制度復活を考えてみる、それも一つの手段だと感じます。

村上龍RYU'S CUBAN NIGHT