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Q.1246
配信日:2012年01月17日
政府・与党は、「社会保障と税の一体改革の素案」を正式決定したようです。
http://jp.reuters.com/article/JPshiten/idJPTYE80502I20120106
この素案を、どうとらえればいいのでしょうか。
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寄稿家:
水牛 健太郎
の回答
日本語学校教師・評論家
日本経済の現状への認識、改革のあるべき方向など、大きな異論はありません。必
要な改革へ向けた一歩と評価できます。ただ、前途はきわめて多難です。
私事になりますが、一昨年末に母親が入院し、半年あまりの闘病の後、介護施設に
入所しています。そのため、それまでほとんど自分のこととして意識してこなかった
医療・介護の制度とじかに向き合うことになりました。
印象深かったのは、医療の充実ぶりです。もちろん地域差などもあり、一部では
「医療崩壊」などと言われる実情もある中で、一概に言えることではないのでしょう
が、母が入院した公立の病院は、実家とは別世界のような、温度管理なども行き届い
た清潔な病室で、入院当初の救急病棟では二十四時間心電図などのデータがとられ、
必要と思われる治療手段が矢継ぎ早に施されました。そして、危険な状態を脱するこ
とができました。
その結果として、入院一ヶ月後に来た請求書の一番上には七桁の金額が記されてお
り、目を疑いましたが、そのほとんどが保険でカバーされ、末尾に記された実際の支
払額は、何とか支払可能な、十万円に満たない額でした。私たちのような資産のない
家の者でも最先端の医療の恩恵に浴すことができる保険制度のありがたさ、すばらし
さを身にしみて感じました。
その一方で、これから高齢者が増えるばかりであることを考えると、このような現
状は果たして維持可能なのか、強い危惧を覚えたのも確かです。医療を支えているの
は、どのような患者に対しても最善を尽くそうとする医師・看護師など医療スタッフ
の皆さんの志ですが、その裏打ちとなっているのは、医療費が保険でカバーされると
いう事実にほかなりません。その前提が崩れてしまえば、患者の資力を確認しなけれ
ば費用のかかる医療行為は実行できないことになります。
それが国民の選択であれば仕方ありませんが、実際に自分の親族に命の危険が迫っ
た時に、お金がないから十分な医療を受けさせなくてもいいと思う人は少ないはずで
す。ほとんどの人は、今の医学の水準でできる限りのことをしてほしいと思っていま
す。医学が発達し、さまざまな医療器具や設備、薬品が生まれていますが、そのよう
な技術の粋を駆使した医療は大変お金がかかり、ごく一部の富裕層以外は、自費では
負担できません。そして今後医療を必要とする高齢者は増える一方なのですから、す
べての人に充実した医療を保証するためには、財源を確保する以外の道はないのです。
野田首相が先頭に立って尽力してきた結果、政府・与党の素案にまでこぎ着けるこ
とができました。しかし、元々消費税率引き上げを主張してきた自民党の、政治的打
算からの反対には心からの怒りを感じます。民主党内も一枚岩にほど遠く、成立まで
は幾多の曲折があり、全く予断を許しません。
消費税率引き上げができなければ、保険制度は維持できず、国民の命の値段に深刻
な格差が生じます。自分の家族の問題、そして自分の老後の問題として考えれば、そ
こに何が賭けられているかは明らかです。医療に関して言えば、医療機関の扉が万人
に対して開かれるか、それとも富裕層だけのものになるか、という問題です。医療に
加え、年金・介護などの制度が、すべての国民に安心を保証し続けることができるか
どうか、ということがかかっています。何としても成立させなければならないと思い
ます。
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