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Q.1233
配信日:2011年10月17日
先週、NYで、「ウォール街を占拠しよう」というデモや集会があり、シカゴやLAなど全米各地にも広がっているようです。この現象をどう考えればいいのでしょうか。
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寄稿家:
菊地正俊
の回答
メリルリンチ日本証券調査部チーフ株式ストラテジスト、マネージング ディレクター
9月中旬にウォール街で始まった“Occupy Wall Street”といわれるデモは、もう
1カ月程度続いており、場所も全米各都市に広がっています。所得及び資産格差の拡
大への反発、金持ち優遇税制の是正要求、高失業・長期失業への不満、公的資金注入
を受けながら高給を享受している大手金融機関経営者への反感などを反映していると
報じられています。
米国の9月の非農業雇用は10万人増と、市場の事前予想以上に回復しましたが、
失業率低下に必要といわれる20万人増には達せず、失業率は9.1%に高止まりし
ました。リーマンショック直後には10%まで上昇しましたが、それから3年経って
も失業率は低下しません。3人に1人が、1年以上失業している長期失業者です。日
本同様に、1人当たり可処分所得も増えない状況になってきました。
米国の製造業はドル安の恩恵を享受していますので、日本より経営環境はいいはず
ですが、日本企業以上に株主重視のコスト削減を行うため、ブルーカラーの仕事は新
興国に流出し、また流出しなくても、要素価格均等化の定理が働くため、国内に残っ
た仕事も、新興国の人ができるような仕事であれば、賃金が上がりません。ホワイト
カラーの仕事もITであればインドに流出し、金融でも優秀な中国人が増えています。
ホワイトカラーの仕事も安泰でなくなりました。以前であれば、こうした現象は、米
国人が信奉する自由主義下での経済及び企業のグローバル化の帰結であると解釈され
ていましたが、長引く不況で、不満が噴出してきたようです。
クリントン政権で労働長官を務めたロバート・ライシュ・カリフォルニア大学教授
は、近著“Aftershock”で、「リーマンショック後の大不況は終息したことになって
いるが、その余震は始まったばかりだ。所得と富が富裕層トップに集中していること
が、米国経済が直面する苦悩の核心である。このことに取り組まない限り、米国に底
堅い好況はやってこない」と指摘しました。富裕層に比べて、中間層の所得が増えな
いことが、借金増につながり、住宅バブル崩壊につながった。中間層の復活なしに、
内需の力強い回復は起こりえないため、中間層のための「新しいニューディール政策」
が必要と提言されました。
日本でも、20年間にわたって経済の停滞が続き、若者の失業率は全体平均の約2
倍の8%に達していますが、米国と異なって、若者から政府批判の運動は起きていま
せん。草食系男子が増えて、反政府運動を起こすエネルギーをもった若者が減ったた
めでしょう。失われた20年にもかかわらず、社会が平穏な日本を、外国人は不思議
に感じるようです。
日本でも、八代尚宏国際基督教大学客員教授が、『新自由主義の復権──日本経済
はなぜ停滞しているのか』という興味深い本を出されました。小泉・竹中構造改革路
線は、政治の世界では禁句になりつつありますが、「小泉構造改革が格差社会をもた
らしたというのは誤解である。今こそ構造改革路線に戻らないと、日本の財政、社会
保障などの問題は泥沼化する一方である」と主張されました。八代教授の意見に対し
て証券界では、同調する意見が多いようです。かつて、竹中元大臣は、「金持ちや大
企業をバッシングしても、国全体は裕福になれない。金持ちや大企業の海外流出を促
進するだけだ」と述べました。日本人は家族を伴って海外に転居すれば、所得税は現
地の税率が適用されますが、米国人は米国国籍を捨てない限り、税率差額を本国に支
払う必要があります。住みなれた国を離れるのは忍びないですが、大企業や富裕層の
海外移転が徐々に進んでいるようです。
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