JMMでは村上龍から投げかけられる質問に金融経済のスペシャリスト達が回答をし、
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Q.1050
配信日:2010年02月15日
内閣府はプライマリーバランスについて、2009年度の赤字幅が40兆6千億円になる
との推計値を発表しました。過去最悪だそうです。民主党はマニフェストにおいて、財政
赤字を拡大しない方向で、つまり行政のムダを徹底的に省くというやり方で政策実行が可
能だと言っていた記憶があります。その計画はどこで狂ったのでしょうか。
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寄稿家:
土居丈朗
の回答
慶應義塾大学経済学部教授
計画が狂ったというより、そもそも無駄の削減で財政赤字を拡大しないようにでき
ると考えること自体が、できない相談だったということです。もし「計画」していた
とすれば、それはそもそも実現不可能な「計画」であり、できなくて当然であり、何
ら驚くべきことではないと私は考えます。
私は、JMM上でも、学術的にも、無駄の削減だけで今後必要になる社会保障給付
の財源を賄うことはできない、ましてや財政赤字を抑制することもできない、という
ことをこの10年間、繰り返し述べ続けてきました。もちろん、行政の無駄の削減は、
不断の努力が必要で、今後も継続すべきことです。しかし、社会保障給付の財源や財
政収支改善のためには、無駄の削減だけでは桁違いに無理であり、増税が不可欠だと
いうことです。
その立場からみれば、むしろ今回の鳩山内閣では、自民党政権ではできなかった部
分での無駄の削減に取り組んだ意味で、「よくやった」といえます。自民党政権のし
がらみの中では必ずしも削減できなかった「無駄」は、事業仕分け等で今回初めて削
減の対象とされました。ただ、残念ながらというべきか、そうした金額は、そもそも
5兆円も10兆円もあるような規模ではないのです。無駄の削減によって財政赤字を
拡大しないようにするというのは、自然増収という僥倖がない限り、我が国財政にお
いては不可能なことです。高齢化により毎年1兆円規模で社会保障給付が自然増とな
る局面においては、なおさらです。
必ずしも将来の増税に反対しない方々でも、目先は無駄の削減が必要で、それは増
税よりも先行してすべきだと考える方は多いでしょう。そうした方々に、将来の増税
のための布石として、無駄の削減を先行して行う姿勢を示すことは重要です。ただ、
現在のところ、その無駄の削減が、必ずしも「官」の信頼回復に結びついていないか
もしれません。真に国民に資する行政サービスのために足らない財政負担を、追加的
に国民にお願いするには、増税が必要なのですが、それをお願いするには、政治家や
官僚に対する国民の信頼をしっかり回復できなければなりません。それは、形だけ、
金額だけの無駄の削減を、いけにえのように国民に示し続けたところで徒労に帰する
可能性があります。私は、今後はむしろ無駄の削減に血眼になるというより、政治家
と官僚の信頼回復に心血を注ぐ方が重要といえると思います。
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