村上龍、金融経済の専門家に聞く
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村上龍からの質問
Q.304
配信日:2002年04月08日
3月が終わりました。あれほど騒がれた金融不安はいったいどこへ消えたのだろうと
思います。日経平均が2000円ほど上がって収まった金融不安は、日経平均が20
00円ほど下がると、また再燃してしまうのでしょうか?
寄稿家: 北野 一 の回答
JPモルガン証券日本株ストラテジスト
2002年の第1四半期が終わりました。この期の日経平均株価とNYダウの相関の強さを示
す決定係数は0.9でした。日経平均株価の値動きの90%は、NYダウによって説明できた
ことになります。

しかし、我々は、日米株価が連動しているという実感を、この間、それほど持ってい
なかったのではないでしょうか。例えば、「日経平均株価」という言葉を含む記事数
は、今年に入ってから664件あります(日経四紙)。この664件のうち、「NYダウ」と
いう言葉を含む記事数は、なんと1件しかありません。因みに、この1件とは「NYダウ、
44年ぶり、日経平均上回る」(2月2日)でした。「NYダウ」という言葉を含む記事数
自体が22件しかなかったことを割り引いて考える必要がありますが、それにしても664
件と22件の接点が1件しかないというのは、0.9という決定係数からすると、異常に少
ないということになると思います。

一方、この664件のうち、「不良債権問題」という言葉を含む記事数は89件もありまし
た。株価が1万円を回復してくると、金融不安が急速に薄れて行ったことからも分かる
ように、両者の因果関係を株式相場→不良債権問題と捉えた結果としての89件なら理
解できますが、実際は、不良債権問題→株式相場という関係で捉える傾向が強かった
ように思われます。

現在でも、4月12日に公表される大手行特別検査の結果が相場材料として注目されてお
りますが、これはその名残でしょう。しかし、こうした我が国固有の不良債権問題と
株価を関連付けて見過ぎると、最近の世界的な株価変動のリズムを逆に見失ってしま
う危険性があると思います。

9・11テロ以降の米国株式相場の変動、すなわち我が国の株価の変動を整理する上では、
米国の金融政策との関係に着目すると分かりやすいです。大きな流れは、米国をリー
ド役とする世界経済の底入れ回復を織り込む動きになっておりますが、これを株と金
利の関係に則して整理すると(1)9・11テロ〜11月6日、(2)11月6日〜3月7日、(3)3月7
日〜現在の三つの局面に分けることが可能です。

まず、第(1)局面。11月6日は、テロ後3度目の利下げが行われた日です。FFレートは2%
まで低下、10年債は翌7日に4.18%と昨年の最低利回りを記録しました。株式相場はこ
うした金利低下を追い風に上昇、金利低下→株高という関係が認められました。

次に第(2)局面。株高を背景に金利も底打ちから上昇に転じてきました。1月11日に、
グリーンスパン議長が「景気の先行きに慎重」と受け止められる講演を行ったことを
きっかけに、いったん株価は下落、10年債利回りも再び5%を割り込んできましたが、3
月に入り、予想以上の景気回復振りを示す経済指標が相次いで発表されたことに加え、
3月7日にはグリーンスパン議長が「景気の拡大がすでに進行していることを示す証拠
が増えている」と議会で証言したことから株価は反発、10年債利回りも12月26日につ
けたテロ後の最高利回り(5.2%)を更新してきました。いずれにせよ、この第(2)局面
においては、株高→金利上昇、株安→金利低下という関係がありました。

最後の第(3)局面ですが、金利がテロ後の最高利回りを上回ってきたところから、金利
と株の関係が変わってきました。ここ1ヶ月は、金利の上昇が株価の下落をもたらす展
開になっていたのです。さて、このように纏めると、足元の懸念材料は米国金利の上
昇ということになります。

ご質問は、「日経平均が2000円ほど上がって収まった金融不安は、日経平均が2000円
ほど下がると、また再燃してしまうのでしょうか?」ですが、基本的には、株式相場
下落→不良債権問題再燃という関係にありますから、2000円下がれば、メディアは再
び金融不安を再燃させるでしょう。ただ、問題は株価が2000円下がるかどうかです。
それについては、我々が不良債権問題→株式相場という因果関係で考え過ぎるあまり
見過ごしてきた要素、具体的にはFEDの金融政策の行方により注目する必要があると
思います。

村上龍RYU'S CUBAN NIGHT